ひと声 ひと色~ Case1

ユニットが壊れた日と音の記憶(再取材&再編集版)

こちらの記事は、AkatsukiがPTA新聞でも取り上げた内容を再取材・編集して掲載しているものです。

取材に応じてくれた友人の「少しでも難聴の人の助けになりたい…」という思いを、少しでもたくさんの方々にお伝えできればとこのページを作成しました。

PTA新聞に掲載したこちらの内容については、学校とPTA本会のみなさまよりご了承をいただいております。

そのため、タイトルはPTA新聞に当時掲載していたものをそのまま使用しております。
(日P全国小中学校PTA広報紙コンクールで受賞したPTA広報紙掲載の記事ベースです)

「音を感覚で聴いている」

一般的に、音が聞こえるのは音を鼓膜で捉え、脳に伝えるため信号に変換して鼓膜を通じて「物理的に聞こえる」ことを指すものだと思います。

小学校のPTA新聞で「ユニットが壊れた日と音の記憶」というタイトルで取材しました。

協力してくれた友人に、人工内耳にしてからは「音を脳が感覚として聞いている」と言われ、「テレパシーのようなものかな?」と返してみれば、「テレパシーの感覚を知らないからわからんよね、頭の後ろのほうで感覚として聞こえるんよ」と言われて頭の中はますますクエスチョンでいっぱいに。

うーーーん、聞けば聞くほどわからない、摩訶不思議な友人の音の世界です。

聞いてくれてうれしい!

友人は聴力障がいについてとても前向きです。

周囲を見渡すと、街中にはイヤホンをした人であふれています。

イヤホンをしている人が増えた影響と、人工内耳で音の世界がどう変化したのか話してくれました。

うみっとのイベント後の会計処理で友人と会い、再び人工内耳について話をさらに深堀りさせてもらいました。

よく生きてきた、と思う

自分で言うのもなんだけど、「よく生きてきた」と思う。

会話が聞き取れないから相手より先に話していたし、みんなに合わせなきゃ!と思っていました。

小学校の高学年から中学校にかけては、聞こえているフリをして、ごまかすことを覚えたかな。

補聴器をつけたのは高校生のとき。

補聴器の音って、音質が悪い大音量の拡声器を耳の傍に置いた感じ。

100%聞こえていたわけではないので、相手の言葉や会話の先を察する力が自然に身につきました。

聴力が落ちてきて、補聴器が必要になっても手話を覚える選択肢を最後まで選ばなかったのは、母がずっと治療法を探していたのと、自分も望みを捨てていなかったし諦めたくなかったんだと思います。


友人の音の世界

人工内耳にする直前まで使っていた耳掛け式補聴器とスティック型補聴器

私のリクエストで再度当時使用していた補聴器を持参してもらいました。

人工内耳の手術前まで実際に使っていたという補聴器は電池切れで動きませんでした。

前に聞かせてもらった補聴器を通した「声」は人の「声」とは言い難く「荒削りの音」が表現としては近くて、補聴器の音を人の「声」として判別できる友人はすごいな!と感心したものです。

こうさするもくじ

音を「感じる」しくみと常音

もともと友人は子どもの頃は音が聞こえていたので、「音がある」という感じを知っているから、「感覚」だと言い切れるのか。

図表を見てみると、補聴器と人工内耳の決定的な違いは「手術が必要なこと」と音を「感覚」と「神経」で受け、脳で会話として理解することでしょう。

しかも、補聴器のように音を物理的に大きくするわけではないので、「頭の中に会話が直接流れ込んでくる」らしい。

あー、だから「テレパシー」なのか。

そもそも、テレパシーというものを知らないぞ?

友人が人工内耳の手術で入院していた病室には、同じように人工内耳に切り替えた方がおられたらしく、「音が感覚で聞こえるようになった」「わかる、わかる!頭の後ろ側に直接聞こえてくる感じで”こそばゆい”ですよね」お互いに話していたらしいです。

ずっと聞こえるオルガンの「壊れた和音」

耳が全く聞こえなくなったと言うから本当に無音なのかと思っていたら、年中無休で響いている「音」があるそうで。

いったいどんな音なのか?

「楽器でいうならオルガンの音。それも高音と低音が混じった和音じゃない音がいつも鳴ってるよ」

—-え?それって今も鳴り響いてるの?

「うん、ずっと鳴ってる」

—-人工内耳にしたのに鳴ってる?

「そうだね。一度、耳鼻科で”耳鳴りのレベル”を検査してもらったら、あまりのひどさに医者が驚いてたよ」

—-いつから耳鳴りしていたの?

「小学3年生かなぁ」

そんなに長いのか!耳鳴りとの付き合いの長さに唖然としました。

耳が聞こえない=無音の世界だと思っていたよ。

—-耳鳴りが常にしているのなら、気が休まらないんじゃない?

友人に尋ねました。

音楽を流しているほうが静か?

写真はイメージです(写真ACより)

「小学3年生の頃から耳鳴りが続いている」と聞いて驚いた私は、耳鳴りがしていたら気が滅入ったりしないか尋ねました。

「慣れてしまって”これが当たり前の状態”で、スルーしている」らしい。

人間ある程度の「慣れ」であれば、スルーできるのもわかる気がします。

しかし、それは「いつか止む」のが前提で先が見えているからだと思うのです。

精神的な部分、しなやかでとても強い。

「なんか鳴ってるなぁ」で済ませてしまえる精神の強さを持っています。

友人と同じ立場になっていたら、私はすぐに心が折れていたかもしれません。

そういえば車を運転するとき、いつもカーラジオで音楽を鳴らしていました。

もしかして…。

「耳鳴りがいつもしていて運転に集中できないから音楽流してるよ」

そういうことか!

友人にとっては音楽を流している方が静かなんだと、話を聞いて納得でした。

手術後はジェット機の騒音並み?!の騒音

「人工内耳の手術後、2日間は本当に絶望していたんだよ」

耳鳴りがオルガンじゃなくて、ジェット機のエンジン並みで「ゴォーッ」という騒音レベル。

「神経に直接電極をつなげたからかなぁ、いじったせいでものすごい耳鳴りがして大変だった」

術後は人工内耳に慣れるためのリハビリをする流れで、3日目からは落ち着いてきてホッとしたそうです。

人工内耳にするタイミングはいつだった?

初めから人工内耳にしようと思っていたのではなくて、長い間、補聴器を使っていました。

何かしら人工内耳に切り替えるできごとがあったに違いありません。

人工内耳の手術の知らせは突然に

その頃、私と友人はお互いに子育てと介護で顔を合わせる余裕がなく、LINEで近況を伝え合う程度の付き合いでした。

久しぶりのLINEでもらったメッセージ。

「今度、頭の手術をすることになったよ」

さらっと流すくらいの感覚で送られてきた内容に、思わず読み返しました。

—-頭の手術って大変じゃん!

今思えば、頭蓋骨をのこぎりで切る未来しか見えなかったかもしれない…。

突然失った音の世界

完全に音の世界を失ってしまったのは、37歳の時。

子育ての真っ最中で、今まで補聴器で聞こえていた子どもの声が突然、まったく聴こえなくなってしまいました。

耳のユニットの故障で、首から上の皮膚の感覚がなくなったんです。

子育てで後悔はしたくない。

子どもの声を聴いて感情を知りたい。

0が1になればいい。

その強い想いが人工内耳の手術を決心させたんです。

人工内耳と電極

見せてもらった人工内耳のサウンドプロセッサ

人工内耳は蝸牛(かぎゅう・かたつむりの部分)に電極を入れ、電極の数が多いほど聞こえる音の幅が広がります。

外側には耳掛け式のサウンドプロセッサを付け、磁石を頭に付けて固定します。

友人の頭の下側は、外側に付けるサウンドプロセッサの磁石の丸い形にへこんでいました。

補聴器のときは空気電池を使っていましたが、今は充電式のバッテリーで予備を持ち歩いているそうです。

人工内耳の選択肢はどれくらいあったのか

当時、主治医から提示された人工内耳の会社はたったの3社。

自分でいくら検索しても出てこない。

情報を集めたいのに、こんなに載せているところは少ないのかとショックを受けていたといいます。

メーカーによって耳掛け式の重さや電極の数に違いがあり、どうするか迷いました。

電極の数が多いと、それだけ音の情報の幅が広がります。

脳で感じ取れる音の領域が広がり、音階の区別がつきやすくなります。

ただし、電極の数が多くても人工内耳との相性があって、人により100%感じ取れるようになるかどうかもわからないのだとか。

当事者でないとあまり調べることはない、人工内耳のこと。

友人は人工内耳を取り扱う会社や情報が少ないのに驚き、現在の人工内耳にたどり着くまで調べるのに苦労していました。

その話をPTA新聞に掲載する前回の取材時に聞いていたので、私も人工内耳のメーカーを検索しました。

「本当だ、思っていた以上に情報が少ない…」

ここに書き記すことで、「誰かの助けになれば」と友人は話していました。

人工内耳と成功確率

ここからは人工内耳を取り扱っている会社を参考までに記しておきます。

※リンク先を掲載しておりますが、独自に調べたものです。
詳しい情報に関しましては必ずご自身で確認することをお勧めいたします。

Cochlear社

MED-EL Japan 

ADVANCED BIONICS社

※会社名にリンクあり

人工内耳に関する検査の際に、病院から人工内耳のメーカーの紹介を受け検討します。

友人いわくメーカーによって電極の数が違い、どのメーカーにするかかなり迷ったそうです。

電極が多ければいいというものでもなく、相性と個人差があり100%自分に適合するのか確かなものがありませんでした。

「家族が背中を押さなければ、電極が多いメーカーの人工内耳を選択することはなかった」と話していました。

音の記憶と成功確率

音の記憶は人工内耳にするまでの半年間できれいさっぱり、忘れていました。

一般的に補聴器時代に聞こえていた音の記憶がない場合、人工内耳にしても音を脳内で再現しにくいと説明されていたんです。

検査のとき、手術の成功確率は教えてもらえず「聞こえるようになる」とは最後まで言われませんでした。

実際には自分と人工内耳の相性がよかったのか、記憶が曖昧(あいまい)だった音も聞こえるようになり、驚いています。

人工内耳にして変わったと思うことは?

〇道行く人がイヤホンをしているおかげで、耳掛け式のサウンドプロセッサがあっても注目されなくなった
〇音楽で聞こえる音域の幅が広がった

〇空気電池からバッテリー充電に進化した
〇音が頭の中に直接響くようになった
〇スマホでの会話やzoomのオンラインが可能で驚かれた(使えるものが制限されることが多い)

やさしい音の世界へ

人工内耳は電極を蝸牛(かぎゅう・かたつむりの部分)に入れる手術が必要で、電極の数が多いほど聞こえる音の幅が広がります。

しかし、音の記憶量や電極との相性、リハビリにもより必ずしも聞こえるとは限らない方法だといわれています。

定期的に言語療法士の検査を受け、PCから音のデータを電極に入れる「マッピング」をして友人の「音の世界」を維持しています。

今は視力・聴力障がいの人向けに「やさしい車」があり、少しずつ過ごしやすくなっているようにも思えました。

何らかの障がいをもつみなさんが健常者と変わらない生活を送るには、まだまだ足りないところがあります。

私たちに何ができるか?今後も考えていきたいと思います。

Akatsuki
自分にとっての「いい音」を求め、子どもの頃からヘッドホン中毒。好奇心と勢いで今はどこに取材に出かけようか思案中。
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