「いっしょにやってみればわかるよ」
宇美町内でゴミ拾いのボランティアをしている団体として紹介されたのが「ひだまり」さんでした。
ひだまりの定例会は健康観察の場で、定例会に来るとみんなと会うことができるし、そのために外出するのを楽しみにしているそうです。年に一度のゴミ拾いのほかに、赤い羽根共同募金のお手伝いもされています。
定例会にお邪魔したときに言われた「いっしょにやってみればわかるよ」の言葉に、ゴミ拾いだから大丈夫だと正直、軽い気持ちでいました。(ごめんなさい)
「誰かが拾うだろう」と投げ捨てた人にぜひゴミ拾いを体験してもらいたいと管理人は強く思います。
「大きなことはできないけれど小さなことでも何かの役に立つならと思って活動している、これは私たちのようなボランティア団体だけがするのではなくて、町全体で取り組まなければならない問題だ」と話していました。
レジ袋の有料化がニュースで取り上げられる前、平成13年からひだまりさんはゴミ拾いを続けてきました。長年のゴミ拾いから見えてきたことは何だったのでしょうか。
外はゴミ箱じゃない!
自分で出したゴミくらい、持ち帰ってほしい。いつも見ていた景色が一変する、今まで気付かなかっただけで想像以上のゴミにもやもやした気持ちをぶつける場所がないまま、黙々と取材しました。
宇美駅前から周囲を見渡すと、ゴミが少ないきれいな町に見えなくもない。いつもは車で素通りすることが多く遊歩道ができてちゃんと歩くのは、管理人、宇美町で育っていてこれが初めての体験です。
朝10時に駅前を出発のはずが直前まで雨がかなり降っていて、ゴミ拾いを雨天決行するか空模様を見ながら駅で雨宿りをしていました。
ひだまりさんにどうするか尋ねると「ゴミ拾いを長年やってきたけど、雨で中止になったことは一度もないのよ」そのお話の通り、10時には雨があがり「ほら、話した通りになったでしょ」強運に驚きながらみんなでゴミ袋と道具を片手にスタートしました。
途中、線路沿いと宇美川沿いのコースへ二手に分かれました。遊歩道の途中には花壇と休憩できるベンチが設置されています。よく見るとベンチの周囲はとくにゴミが多くてなかなか前に進めません。
ここでゴミで多かったもの上位3つ。
- タバコの吸い殻
- レジ袋と食べかす
- ペットボトル&空き缶
タバコの吸い殻については流行りを反映しているのか燃えたあとのタバコが少なく、短いタバコそのままの吸い殻が多かったです。
管理人が最近のタバコ事情を説明すると「そうそう、タバコは燃えていないのが増えたわね。短くなったぶん数が多いような気がするけどそんな事情があったのね」。
「これは何をするものなの?」と差し出されたのは、加熱式タバコのホルダーでした。
遊歩道のベンチ周辺だけでなく、うみ・みらい館前の道路を挟んだ駐車場や道路の側溝に言葉が出なくなるほどのゴミが捨てられていました。
断トツでタバコの吸い殻が多かったのは川沿いにある駐車場です。ガードレールに身を乗り出してペットボトルや吸い殻を拾います。
「外はゴミ箱じゃない!!」
雨に濡れたゴミは水分を含んでおり、軍手をしていてもほとんど意味がありませんでした。
喫煙所が減って肩身が狭いのはわかります。
それとポイ捨ては別、携帯用の吸い殻入れくらい喫煙者のマナーとして持ち歩きましょう。
外で捨てるぶん車の中やご自宅はさぞかしきれいだと思いますが、外はゴミ箱ではありません。
一番タチが悪いのは、レジ袋に詰め込まれたゴミです。
とくにうみ・みらい館前の道路で川沿いには一部歩道スペースがないため、歩行者ではなく車から投げ捨てられたものだと考えられます。
家庭でゴミを出す際は分別をしますが、外に捨てられたゴミはそれが皆無です。
おにぎりを食べたであろう包み、お菓子の袋、ペットボトル、空き缶などがいっしょに詰め込まれています。
一つ一つ中を開けて、飲みかけで捨てられたペットボトルは中身を空にしてゴミをその場で分別します。
拾っていくうちにあきらかに飲みかけではない、以前ニュースにもなったペットボトルに排出された実物を初めて見ました。(おそらくそれを実行したご本人はここをご覧になっていないと思いますが)
身内のだったらまだわかる、誰のかわからないものを始末する人の身にもなってほしいです。
雨上がりの側溝は滑りやすくなっていて、ひだまりのメンバーさんと管理人は足を滑らせて側溝に落ちました。
2人ともケガはなかったのですが、側溝の中と外は草と土が雨水を含みクッションのように柔らかくなってしまい足の踏ん張りが効きません。
管理人はメンバーさんを引っ張り上げるのに必死で、すぐ側は車がスピードを出して容赦なく走って行くし一人ではできない作業だと痛感しました。
両手にゴミ袋と道具を持ち、側溝のゴミを拾うには危険を伴います。
安全面からも子どもたちでは危なくてできる作業ではなく、大人がすることになるのでしょう。
ゴミを誰かが捨てたら、ボランティアさんや清掃会社の方が片付けることになります。捨てなければそのような手間や税金もかかりません。
ひだまりさんの会員数全盛期には、原田(はるだ)地区のエリアまで範囲を広げてゴミ拾いをしていたそうです。
少人数でも続けられる範囲が宇美駅からし~ず・うみまで、それ以上は体力的にも限界なのです。
ちょっとした散歩道程度の距離でしたが、作業はたっぷり1時間以上。ゴミは多いし分別する作業を考えると回数が増やせないのがわかる気がします。
もっと人数がいたら状況が変わってくるし町の景色も素敵になるはずです。
ニュースになっているプラスチック問題、結局は外で捨てる無責任な人たちがいるからレジ袋が有料になってもゴミのポイ捨てはなくならない。
家庭ゴミを店舗のゴミ箱へ突っ込むマナー知らずがいることで店先のゴミ箱が撤去されてしまう。
お金をかけずに捨てようと思ったら、分別するのも面倒だしその辺に捨てていくという悪循環になります。
普通に暮らしているとどうしてもゴミは出ます。
無駄なものを減らすことも大切ですが、自然に戻らないゴミを適切に処分するだけで町のゴミ事情は変わるのではないでしょうか。
続けていくことの難しさ
どこのボランティア団体も長く続けば続くほど悩みになるのが新規の仲間が増えないことです。
宇美町のボランティア団体全体の約7~8割は高齢者で構成されています。
団体を立ち上げるのは比較的簡単でも続けていくのが難しい。ひだまりのみなさんも高齢化が進んで活動の維持が厳しいと話していました。
町をきれいにする活動や呼びかけを絶やしてはいけないと思いながらひだまりさんの取材を終えました。
ボランティアに対して物好きで暇な人ばかりが活動しているイメージがあるのは残念です。ひだまりのみなさんをはじめ、たくさんの方々が少しでも世の中の役に立ちたい信念をもって活動しています。
この記事を新聞に掲載したあと、新型コロナ感染症の影響もあってひだまりさんは解散しました。
みなさんの気持ちを形に残したいという思いから再編集し掲載許可をいただいています。
ひだまりのみなさんの温かい心と穏やかな笑顔が印象的でした。